ソフトウェアエンジニア@横浜の徒然日記

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【書籍】研究を深める5つの問い

本書が提起する問題提起は

「なぜその研究を行うのか」と自身に問いているか?

というもの。そこから研究を掘り下げていくべきだと。

会社事業についても同様のことが言えると思った。

「なぜその事業を行うのか」と自身に問い,

その答えを持って取り組んでいるか?

研究を深める5つの問い 「科学」の転換期における研究者思考 (ブルーバックス)
 

 目次

はじめに
問い1 誰をライバルと想定して研究していますか?
問い2 あなたの本当の目的はなんですか?
問い3 論文を書こうと思ってませんか?
問い4 「科学」を盲信していませんか?
問い5 研究者として「自分」を鍛えていますか?
エピローグ 次なる科学の時代は
おわりに

問い1では以下のような事例を用いて

問題提起を行っている。

どちらかというと研究は好きなほう。

昼夜を問わず研究はがんばっている。

ただなぜかぱっとした成果がでない。

論文や学会発表をしても、

良い評判にも悪い評判にもならず、

なんとなく論文にしたという

事実があるだけ。研究そのものは

そこそこインパクトはあると

思っているのだが。

 筆者は上記事例に対して,

研究者としていい仕事を成すためには、

あなたの研究領域以外にも視野を広げ、

大勢が納得するような本質を突いた

テーマを設定する必要がある

と述べている。研究に限らず会社事業においても

専門性の分化が進んでいるため,

同じことが言えるのではないだろうか。

 問い2では

正直、論文の諸言はかなりの綺麗ごとを

書いているとは認める。

私の研究でやっているのは

とあるパラメータを得ること。

それが得られたからといって、

諸言に書いたような

「社会変革に資する基盤技術創出」

につなげるためには、

まだまだ解決すべき事項が山のようにある。

それに厳密な解を求めるため、

いや正しく言うなら「論文にするため」に

極低温での実験に限定するなど

かなり条件を絞っており、

現実社会ではとてもそのような理想的な環境は

ないだろう。もちろん、このような研究が

必要であることは疑いようがないが、

ちょっと自分たちにとって

都合のいいようにものごとを

考えているかもしれない。

 と事例をあげ、それに対して

優れた個別領域の研究は、

必ず普遍的なテーマの体系の内にあるもの。

 と述べ普遍的なテーマ設定に迫る

3つの手法を紹介している。

会社事業も同様に例えば「社会の課題解決を行う」

というテーマを基に個別事業を展開するほうが

長期的には後世にも残る企業となっていく気がする。

問い3では

 論文になって別刷りが手元に届いた瞬間は

とてもうれしいものだ。しかし、その後は

なにか反応があるかというとそうではなく、

自分の業績欄が1行増えるだけ。

そう考えると、論文として掲載するために

形式をあわせることとか、事務局のやりとりとか、

相当な苦労があるにもかかららず、なぜかむなしい。

査読者とのやりとりも最近は的外れな指摘も多く、

なんでこの人の自分勝手な意見に対して

大がかりな追加実験までやったり、

引用文献を増やしたりしなきゃいけないのだろうと

思えてくる。確かに論理的に粗削りだけど、

できればあの実験データも論文に載せて

この研究には大いなる可能性があることを

主張したかった。「論文」にするために

なぜ本当にいいたかった主張を

削らないといけないのだろう。

 という事例に対して,

査読や論文制度等の外的な問題点と,

真理探究のあり方の変化という内的な問題が,

理科系論文に共通して見られる「言葉や文章」の軽視に

出ているとしている。

論文の形式に囚われず,

「自分はこれが知りたい」と堂々と書けるか?

が重要としている。

 

問い4では

科学の発展は間違いなくいいことだよね?

電池とか、輸送とか、作業とか、なにもかも

効率がよくなったほうがいいんじゃないの?

インプットとアウトプットの差分最小化を

追い求めるのが人間の幸福じゃないの?

科学こそが厳密解追求の最先端であり、

論理性の究極形であり、どんな分野においても、

どんな社会においても、もっと科学が

進んでいくことがいいことじゃないの?

という問いかけを行い、それに対して

「客観」=「科学を科学たらしめている」そして

「客観」は「主観と客観は分けられる」

「曖昧や偶然は存在しない」

「複雑な事象は構成要素を分解すれば性質を解明できる」

という根本的な知の考え方に支えられている。

という科学の前提条件を出しつつ

科学は「近似解と限定解」で成り立ち、

「個人の価値観・見解」といった

主観が入る等、科学研究者が考えておきたい

ポイントを述べている。

 

問い5では

結局、研究をがんばれってことでしょ?

でも「研究をがんばる」って、

とにかく実験したり参考となる

論文を読んだりすることだよね。

それ以外に研究は進みようがないのでは?

まあ、世間では他の分野を知りなさいとか、

研究以外のこととか、いろんなことが

研究のヒントになるとかいうけど、

そんなの実感したことない。

他の分野の研究なんてよく知らないし

興味も持てない。とにかく、目の前にやるべき実験、

読むべき論文が積まれているのだ。

今、自分がやっていることが研究だし、

研究というモノを進めるとは、

とにかく目の前の実験をやることなのだ。

という事例を出し,根本的な問い

「自分にとっていい仕事とは何か」を投げかけ、

いい仕事をするためも「思考」「技術」を

磨く手法を述べている。具体的には

「その研究をなぜやるか」について、

自分と他人を相対化してみるといった

手法や他流試合で

「衝突する・恥をかく・学ぶ・また衝突する」

を繰り返すことで自らの表現に活力を

与えることの意味を述べている。

 

エピローグでは報知新聞が

1901年に掲載した「20世紀の預言」と

今の研究者たちが予想する100年後の未来社会

の比較で,

「技術は発展するがそれにより別の問題が発生する」

という傾向が出ている旨が述べられている。

それを踏まえてこれからは

「研究者自身の思想性」が求められてくる

という形で締めくくっている。