刹那的に生きる 〜一瞬の光〜
■舞台
日本最大の財閥の中核企業
■登場人物
橋田浩介:38歳の若さで人事課長に抜擢されたエリート。
中平香折:短大生。幼い頃より母・兄に過酷な虐待を受ける。
藤山瑠衣:28歳。社長の姪で才色兼備。外資系証券会社勤務。
■ストーリー
浩介は会社での面接をきっかけに偶然知りあった
香折との触れ合いの中で,順風万風であった
自分の生き方を見つめ直すようになる。
一方で会社では社長と副社長の間での覇権争いを受けて
浩介の運命は大きく揺さぶられていく。
■読後感
「・・・ただ、一瞬一瞬を、その次の一瞬が
例え死であっても、絶対に後悔しないように
生きようと思っているだけだ。・・・」
浩介がかつての恋人に「刹那的」と評された時に
返した言葉。過去のこと、未来のことを考えるよりも
今という一瞬に全力を尽くすことだけを考えたほうが
後悔のない最期を迎えられる気がする。
「・・・どこか知らない土地に行って、
新しい自分になって生きようなんて絶対思わない。
・・・そんな時って、死ぬのが素晴らしい楽園に
行くことのような気になるんです。・・・」
香折が浩介に語った言葉。虐待した相手よりも,虐待を
受けた自分のことを何よりも憎む心理から発せられている。
浩介と香折の二人に共通することは形は違えど
「今」に強力な焦点を当てていることだろうか。
浩介は未来に対して希望的。香折は未来に対して絶望的。
という違いはあるが。
タイトルにある「一瞬の光」の意味が
今になって読み返して腹落ちした。